少年人口の減少により、少年院・少年鑑別所ともに、近年、新収容者数は減少傾向を示しています。しかし、一方では少年による世間の耳目を集める重大な事件が発生しています。少年の非行をめぐる状況は、なお予断を許しません。
最近の少年犯罪の特徴として、少年がささいなきっかけで凶悪、冷酷ともいえる犯行に走り、動機が不可解で、少年自身なぜそのような事件を引き起こしたのか十分に説明できない場合があるなど、従来の少年犯罪との質的な違いも指摘されています。いま、少年院・少年鑑別所では、教育・指導の難しい少年が急増しており、その少年の処遇に当たる多くの法務教官は、日々、悩み職務を行っています。
また、2007年5月に少年法が改正され、14歳未満の少年であっても少年院に送致できることとなり、とりわけ小学生の受入にあっては、低年齢の少年の発達段階に応じた個別処遇が必要であり、その職務の複雑・困難・専門性は一層増すものとなっています。
しかし、政府の定員削減計画がすすめられる中、少年院・鑑別所では職場実態に見合った要員が確保されず、慢性的な要員不足に陥っています。少人数の職員で多種多様の収容者を適正に処遇することが求められるため、残業や夜勤回数を増やすことなどによって要員不足をカバーしようとしていますが、絶対数が足らず限界に達しています。休暇はほとんど取れず、過酷な職場環境から健康を害す者が続出し、定年を待たず退職することが珍しくない状況です。
また、要員不足は収容者に対しても重大な影響を及ぼしています。少年個々人へのきめ細やかな教育が行われてこそ、少年の不安やストレスが解消され、罪を深く反省し健全な社会人として社会復帰することができます。しかし、現状では要員不足により収容者の管理のみに追われ、教育が不十分のままで社会の戻らざるを得ない体制にあります。少年院を退院した後、社会への適応がうまくできなければ、再度罪を犯してしまう可能性も大きくなり、その少年はもとより社会にとっても大きなマイナスといえます。