的確な現地の調査、権利関係の判断には知識と経験を備えた人的体制の確立が不可欠です
法務局では、政府方針である「地図整備事業」を一生懸命に行っています。地図整備事業の内容は各種ありますが、一番大きな事業は全国の都市部を対象とした「不動産登記法第14条地図(正確な地図)」作成作業です。
「不動産登記法第14条地図」の作成作業は、専門の知識と経験を備えている土地家屋調査士の方々と法務局の職員が連携し、各年ごと作成対象とする地区を決定し行っていますが、その内容は現場調査や測量は当然のこと、地権者への事前説明から始まり、境界確定のための立ち会い、簡易な所有者間のトラブルの解消、地図作成後の縦覧作業など高度な知識と経験を備えた人的体制の確立が不可欠なものとなっています。
しかし、法務局、特に登記の職場に働く職員は年々減らされており、地図作成に必要な要員を確保することができなく、繁忙な職場から事務応援を得て何とか処理していますが、そのしわ寄せは各職場での日常的な残業となって表れています。
「不動産登記法第14条地図」作成後には、地権者の皆さんから「法務局の職員だから安心して任せられた」、「これで隣地所有者とのトラブルがなくなった」などの声をいただくとともに、正確な地図ができたことから下水道などの環境整備が早急に進むなど、地権者の皆さんがこれまで抱えていた不安や不満の解消が進んでいます。職員はこれらの声を糧に頑張っていますが、人的体制の確立がなされないこのままの状態では限界となっています。
土地の筆界が不明な場合に、その位置を明らかにする筆界特定制度の創設を内容とする「不動産登記法等の一部を改正する法律」が2005(平成17)年に成立し、2006(平成18)年1月20日から施行されています。
この制度の創設によって、これまで境界画定訴訟によるしかなかった境界(筆界)紛争について、法務局に申請することで簡易・迅速に筆界が特定できることとなります。
筆界特定制度に対する国民の期待は大きく、施行後全国10,000件を超える申請が提出されています。
筆界特定事件の処理は、筆界特定委員(弁護士・土地家屋調査調査士・司法書士)の意見を踏まえ筆界特定登記官が筆界を特定することとなりますが、その事務を処理する職員は現場調査はもとより、歴史的資料の収集、関係者からの情報収集など、高度な知識と経験が必要です。
しかし、筆界特定事件処理にかかる定員措置はなされず、担当職員は一人で複数の事件処理を抱え、恒常的な残業や休日出勤などによって処理しているのが現状であり、今後更なる申請の増加が確実視されているなかにあって人的体制の確立は喫緊の課題となっています。
2011年秋期以降から職権による建物滅失登記に関わる作業が本格化したことをはじめ、不動産登記等における登録免許税の還付手続や土地の境界復元作業などが実施されています。また、被災した土地・建物の代替不動産や相続等に係る登記事件数が増加傾向にあり、土地区画整理事業などを中心とした大型の登記事件処理なども想定されることから、これらの膨大な業務に十分対応できる必要な増員の確保が不可欠です。