反響を呼んでいる「あたらしい憲法のはなし」

全法務省労働組合 岩波 薫

 全法務省労働組合では、毎年憲法記念日を迎える時期に国公労連の方針としての「憲法遵守職場宣言」を、全ての職場で取り組んできました。これは憲法第99条の「公務員としての憲法尊重擁護義務」を職場組合員の総意で確認し、内外に宣言するものです。また、今年は同時に「憲法遵守・改悪反対決議(国会請願)」も取り組んでいます。
 これら取り組みのため、久々に「あたらしい憲法のはなし」(昭和22年文部省発行・日本平和委員会復刻※)を全職場に配布したところ、組合員やOBから本部宛「声」が寄せられたので、そのいくつかを紹介します。
▽『いま、憲法改正が議論されている。確かに環境権など新たな権利もあるが、積極的改憲派の人たちは、国際貢献と称して憲法第9条を改正し、国際紛争に自衛隊を出動させようとしてる。世界中で軍事介入により紛争を解決した例は聞いたことがない。日本国憲法が制定された当時、「二度と戦争を起こさないこと」を誓って第9条が制定されたはずだ。 私たちの国が世界に誇れる憲法を守り、憲法の精神を世界に広げる事こそ真の国際貢献であると信じている。』(大阪支部青年・中坊廉男)
▽『昨年退職しました。在職中3ヶ月間の法律専門の研修を受講した際、当時「憲法」でも他の科目同様「考査」が実施されていましたが、最近は講義(基本的人権のみ)だけとのことで、ちょっと寂しい感じです。そんな折り「あたらしい憲法のはなし」を読んで、改めて日本国憲法の素晴らしさを実感しました。現憲法を知り・理解することで、改憲論の危険な意図が浮き上がってきます。一人でも多くの人に「是非読んで!」と購読を勧めています。』(東京支部OB・加藤晴子)
▽『先日、広島での憲法調査会地方公聴会で、「憲法を改正する前に政府に憲法を守らせ、基本的人権の侵害をさせないことが国会の役目でないか」との発言があった。憲法第99条には「憲法尊重擁護義務」の規定がある。しかし、現実はどうだ?最高法規にそった政治がなされているだろうか?憲法に反した法律や法令はないだろうか?基本的人権はどうだ?今、国民からの命令としての「日本国憲法」を政府に守ら、守るように監視することが必要なのだろう。』(広島支部中年・清水章宏)
 提起している「憲法遵守宣言」と「改悪反対決議(国会請願)」は、憲法を職場に生かす観点からも、今多くの職場で取り組まれています。
 一方、全法務は職員の増員を求め集約した利用者・国民からの増員支持署名を、憲法第16条の請願権の行使として国会に提出し、過去25年連続して請願の採択を実現させてきました。2005年も増員請願採択をめざして全国で奮闘しています。
 「日本国憲法を国民生活に生かせ、改憲なんてとんでもない」の運動がますます重要になってきています。
※「あたらしい憲法のはなし」は昭和22年8月に文部省より発行され、全国の中学一年生の教科書として使われましたが、朝鮮戦争・自衛隊設置の流れのなかで2~3年間で教室から姿を消しています。


清水章宏
 

広島で憲法調査会地方公聴会が開催されたときのこと。
 その中で「憲法を改正する前に、政府に現行憲法を守らせ、基本的人権を侵害させないことが国会の役目ではないか」との発言があった。あらためて「あたらしい憲法のはなし」を読み、憲法が国の治め方、国の仕事のあり方の根本であり、最高法規として天皇、大臣、裁判官、公務員は憲法を守る義務があることを再認識した。
 しかし、現実はどうか。最高法規にそった政治がなされているのか。憲法に反した法律や法令がないだろうか。基本的人権がないがしろにされていないだろうか。
今、国民からの命令としての「日本国憲法」を政府に守らせ、守るように監視することが必要なのだろう。


加藤晴子

 1964年(昭和39年)に職に就き、2003年(平成15年)にリタイアしました。入局して20年目くらいに三ヶ月間の職場研修を受けた。専門の法律の勉強が中心の研修であり、憲法のカリキュラムがあり、考査が実施された課目であった。その研修は同じ機関と形式で今日も続けられている。しかし、何年か前からか、一応憲法の講義はあるが、テスト課目ではなくなった。
 今「あたらしい憲法のはなし」を読んで、改めて日本国憲法の素晴らしさを実感した。現憲法を知ること、理解を深めることで、改憲論の危険な意図が浮き上がってくる。周囲の人にもこの冊子を「是非読んで」と購読を勧めたい。


中坊廉雄

ボタンを押せばミサイルが飛んでいき、安全な場所から人が殺せるような時代に、わたしは戦争を知らない世代の人として生きています。
いま、憲法改正が議論されています。たしかに環境権など、憲法制定当時には考えなれなかった権利もありますが、しかし、国際貢献のために軍隊の活用をねらおうと憲法第9条「戦争の放棄」の「改正」にまで手を伸ばそうとしています。しかし、本当に国際貢献に、軍隊の派遣が求められているのでしょうか。世界のどこの歴史を見ても、軍事介入によって根本的に紛争が解決した例はありません。世界で求められている国際貢献とは、飢餓や貧困などへの救済ではないでしょうか。
この日本国憲法が制定された当時、戦争によって多くの方々がなくなられたことを悲しみ、二度と戦争を起こさないことを誓って、憲法第9条が制定されたはずです。そして、世界の国々が日本の憲法第9条の精神を学び、軍備縮小や戦争の予防をすることによって、初めて国際貢献となるのではないでしょうか。
いま、議論されるべきは憲法第9条の「改正」ではありません。私たちの国が、この世界に誇れる憲法を守り、そして、この憲法の精神を世界に広げることの先にこそ、真の国際平和があると信じています。