規制改革・民間開放推進会議(議長 宮内義彦オリックス株式会社会長)は昨年12月24日、「規制改革・民間開放の推進に関する第一次答申」を公表しました。その中で「市場化テスト」の本格的導入に向けた基本方針を明らかにし、平成17年度における試行的導入のモデル事業として、「ハローワーク」関連、社会保険庁関連、行刑施設関連としています。
「新行革大綱」のなかでも民間開放に向けた手法とされている、この「市場化テスト」。登記もその検討対象とされていますが、どういった内容なのか、改めて考えてみました。
「市場化テスト」とは、官と民を対等な立場で競争させ、「民でできるものは民へ」を具体化させる仕組みです。
透明・中立・公正な競争条件の下、公共サービスの提供について官民競争入札を実施し、「価格と質の面で、より優れた主体」が落札し、当該サービスを提供していく制度です。
こうした制度は米・英・豪などで実施されています。
企画・立案を含めた公共サービス分野については、「民間開放がほとんど進展していない」として官から民への事業移管を加速するための横断的な手法として市場化テストを適切に導入して、2006年(平成18年)度から実施していく必要があるとしています。
市場化テストの検討対象は国(各府省の内部部局、外局、地方支分部局に加え、独立行政法人化等を含む。以下同じ)及び地方公共団体のすべての事業(以下「官業」という。)とする方向で引き続き検討を進めるが、当面は、地方公共団体の事業に先行して、国が率先し、自らの事業を対象とした市場化テストの制度整備を行うとしています。
あわせて国は先進的な地方公共団体が自発的に市場化テストを導入・実施することを阻害している現行法令などの改正など、必要に応じ、所用の検討・環境整備を行うとしており、まず民営化ありき、民営化のためには法律を変えてまで行えというとんでもない中身となっています。
市場化テストの検討対象となりうる事業はすべての官業としています。
また、対象事業の決定について毎年度、民間事業者からの提案を幅広く受け付け、市場化テストの対象としている事業及びこれに伴い講ずべき措置(関連する規制改革及び官民間の競争条件均一化等)をリスト化し、決定・公表するとしています。従って毎年不断に民営化の検討を進めることとなります。
昨年の8月にとりまとめられた「中間取りまとめ」では民間開放の意義を次のように整理しています。①市場原理の導入で、効率性・創造性が向上し、多様なサービスが可能となる、②官が行うべき必然性がある業務に特化し、官の人的配分の適正化を達成するなど行政改革が具体化できる、③民間の新しいビジネスチャンスを創出できる、以上の3点です。
②をわかりやすく言うと「国は必要最低限のことしか、もうやりません」ということになるでしょうか。
注目すべきは③の新たなビジネスチャンスの創出です。このことは民間企業のホームページや報告書でも明らかです。その中において市場化テストやアウトソーシングの目的や意義を「新たなビジネスチャンスの創出」と位置づけています。市場化テストで民間企業がサービスを担うことになればサービスに係る基本的な運営費は、税金からまかなわれることになります。民営化により、行政の効率化が実現できるとしていますが、果たしてそうでしょうか?これまでは政府の支出が人件費、施設費などの基本的な経費ですんでいたものがそこに企業の儲けが加わるのです。または手数料の値上げといった形で国民に跳ね返ることになるでしょう。行政の効率化をうたっていますが、サービスの充実にはふれていません。つまり、民営化によって潤うのは受託した企業だけということになります。「ビジネスチャンス」、見方を変えれば、「税金のぶんどり合戦」です。
規制改革・民間開放推進会議は市場化テストが民が落札した官の事業に従事していた公務員の処遇について | |
○ | 各府省横断的な配置転換 |
○ | 落札した民間の希望等も勘案した民間事業者等への移転を図るといったことを想定して検討を進めています。 |
市場化テストで「民」がその事業を「落札」した場合、事業に従事していた公務員の処遇について、規制改革・民間開放推進会議は「スムースな公務員等の配置転換・移転が行われる仕組みを規制改革・民間開放推進会議を中心に検討しつつ、市場化テストの本格導入まで整備する」としています。先に挙げた譲渡型では公務員があぶれるという形になりますし、本人の意向は無視し、遠隔地への異動を強制といった事態の発生も想定されます。公務員の身分、処遇に関わる重要な点について開放会議が中心になっているということは非常に問題があります。
一方、財界の動きも見逃せません。12月17日、日本経団連が公表した「経営労働政策委員会報告2005年版」では市場化テストに関連して「提起したいのは公務員制度の抜本的改革である。」とし「身分のあり方などを含めた国家公務員・地方公務員制度の抜本的改革」を主張しています。